今回のタイトルは「パンドラの穴」
その名の通り開けるか開けないかが重要なカギとなるエピソードとなっています。
冒頭で主人公の南風原との待ち合わせの場所へと向かう黒木という名の男。今回のゲストにしてメインパーソンです。
しかし、このタイトルバックが出て、目が覚めるといきなり謎の空間へとたどり着いてしまう事に。上を見れば月が見えます。
そこは穴で、その穴の中央に不可思議な円盤型の岩の蓋が。この始まり方、世にも奇妙な物語と似てますね。むしろ世にもがQをパクったのかw
その蓋を開けようとした黒木は、好奇心に駆られて岩をどかしかけるも、煙が吹き出し、咄嗟の判断で開けるのをやめてしまいます。
その声の主は火の玉で、一点に集まった後で一つの集合体に。
今回の登場怪獣…というか怪物はコイツ。
太古の昔に人類を蔑む存在に穴に封じ込められた存在との事。
「すべての悪意、憎悪、嫉妬の塊」と自称するマーラー。
マーラーは岩の蓋の中にいる存在で、自分を開放させる為に黒木を選んだらしい。
マーラーが解放されるとどうなるか?悪が悪ではなくなり、善と悪の境が無くなる…すなわち混沌のエネルギーが流出してしまうのです。
「それはまさにパンドラの箱じゃないか」と反論する黒木。ここでパンドラネタを持ち出す辺りが上手い!そして今回のタイトルとも直結しますねw
勿論、こんなデメリットしか無い蓋など、開けるわけが…しかし、人間というのはそんな単純な生き物なはずがなく。
マーラーVS黒木の心理戦が、今回のみどころです。
正平のバー、トビラでは、黒木が遅いと指摘する主人公、南風原が。
ただ、黒木は時間に遅れる事はなくとも、ドタキャンすることが多い人らしくて。
どうやら黒木は南風原の大学時代の同級生らしいのです。
黒木と南風原は大学時代からの腐れ縁で、共に実験をしていた仲。
喜怒哀楽のコントロールに携わっていた者同士で、性格のソリは全く合わず仲が芳しくなくとも、お互いを認め合うよきライバルであったといいます。
しか~しここで黒木の方は一線を越えてしまったらしくて…。
「悪意、嫉妬」のエネルギーを人間から取り除こうと、自分の妻を実験台に使ってしまう事に。
勿論お互いの同意があり、妻も愛していたらしいのですが、実験は失敗。妻は昏睡状態に。
一応、確信は持てずとも黒木自身は「医学で完治する」と信じていたのですが…。
そんな中、穴の中にいる黒木の前に昏睡状態の妻、ハルカが現れます。
治る見込みの無い病気から何故簡単に立ち上がれたのか…。
ええ、勿論これはマーラーが連れてきた…というか魅せた幻。
黒木は「返せ!」と叫ぶも、ハルカはカカシに変わっていて。
こんな感じで、マーラーは黒木の「闇」の部分に触れ、どんどん心理的に開けさせるよう誘惑していきます。
再び「トビラ」バーへと舞台チェンジ。
絵美子と正平は喧嘩に。
同意といえども愛する人を犠牲にしてしまった黒木を批判する絵美子と、リスクなしでは科学は進歩しないと主張する正平。
黒木が妻のハルカを愛していたことは確かだし、昏睡状態になってしまったのは単なる事故だと。
どっちも間違いではないような気がしますね。
そこで、絵美子は正平の心を試す事に。
裏返したコップの中に絵美子なりの「大切なもの」を入れ、正平に絵美子次来るまでに開けるなと。
「開けたら絶交だからね、あと開けたら分かるように細工もしておいたから」
南風原にヒントを求めるも「約束を守って開けないのも、好奇心に駆られ開けるのも、両方人間らしい行為」とはぶらかされます。
今回のテーマを一言に集約したぞ南風原さん…。
そう言うと南風原もバーを後にします。
再び穴の中。
黒木の前にかつての友人、南風原が。
南風原は「この下に悪意がある可能性だってある。開けない方が良い」と諭します。
それに反論し、「悪意では無いかもしれない、それを確かめるのが科学者ではないのか?」と黒木。
そして蓋に手をかけるが、離す。
そう、黒木は今自分の前にいる南風原こそがマーラーの幻だと知っていたのです。
だから敢えて開ける意志を示したのですね。
「君は意外と頭が良い、蓋を開けさせるのに君を選んだのは正解だった」と正体を現すマーラー。
怪物然とした風貌から打って変わって、人間に近いいでだちになりました。
やがて夜が明けようとしていました。
黒木は悪魔についても知っていて、「日の光に弱い」事も熟知。
黒木の予想は確信に変わり、日の光を受け完全消滅するマーラー。
最後まで彼の挑発に乗らずに「頭脳戦」でマーラーに勝利した黒木は有頂天に。
バーからの帰路、絵美子は封鎖された神社の内部に不可思議な穴があるのを見つけ、好奇心から入っていくことに。
勿論絵美子の目に映るのは高らかに勝利の雄たけびを上げる黒木なので、助けるか否かを何度も聞くのですが、黒木からの返答はまるで会話にならないもの。
それもそのはず。
黒木の眼には、絵美子が彼の妻のハルカに見えていたのです。
ハルカがそう言っているように聞こえた黒木は、遂に開けることを決意!
あ…開けたー!
勿論、結末は…!
最後の最後で気を抜くとは…所詮人間と言うべきかマーラー凄しと言うべきか。
勿論、冒頭でマーラーが言ったとおり、混沌のエネルギーが噴き出します。
はははははー!という滅茶苦茶恐いマーラーの叫び顔と顔ドアップと、世界がひっくり返るところでお話は終了。
遂に好奇心を抑制できなくなった正平は、遂にコップを開けてしまいます。
はてさて、中身は…?
以上第4話でした。
今回は、舞台演劇のような構成で、登場人物がマーラー含めわずか6人と言う最小構成になっています。
穴の中とバーを交互に行き来しながら描写する事で、SFチックな世界観と人間の心理を巧みに描くことに成功しています。
かの有名なドイツの文学者、フランツ・カフカの「変身」は、日常の中で突然主人公のグレーゴルが虫に変貌すると言うノンフィクションな世界を描いていますが、結局は「社会から孤立したものを虫に例えた」んですよね。
このように、文学作品にも現代社会や人間のこころを、独特の不可思議な現象によって例えているものが私は好きな傾向にあるようです。
今回ならば決して犯す事も干渉することもできない人間の「こころ」ですかね。
それをまさしくウルトラQらしく「SF的に」描いたと。怪物や怪獣なんてのはウルトラQやウルトラマン、怪獣映画の特権ですし。
他じゃ描けない要素を持ってる分ウルトラQっていう番組は大分大きな武器を持ってると思うの。
元のウルトラQもバケモノや不可思議な生命、怪獣が巻き起こす怪事件がテーマでしたが、これも見事に的を得ているような気がしました。
結局、マーラーに勝ったと思っていた黒木も、最後の最後で油断をして負ける。これも人間の持つ醜くも美しい性質の一つだと思います。
あの、世界が混沌に覆われるオチも「科学者」というレッテルを背負った黒木なりの最後とみていいでしょう。
「科学者」ってのは人類の進歩を委ねられた人種のように思いますしねぇ。責任を担っていうるからこそ、マーラーに人類の「代表者」として選ばれたような気がします。
妻を犠牲にしてしまったように、科学者は常にリスクが大きい人種…という事で、「マーラーに勝たなければならない」という大きな責任を担った一人の「科学者」が負けた時、それはそれは人類にとって大き過ぎる代償がやってくるわけで…だからあのオチは妥当な気がします。
ってか、この人、「人間である前に科学者」なんですね。普通は前後逆なんですが。
ちなみに、「マーラー」とは、ブッダを誘惑した悪魔の名前。
どうもこの番組、宗教色が強いですね…そのネーミングが話のテーマに繋がっているのも上手いです。
逆にちょっと気になった点は、脚本が1話からずっと同じいながき氏なので、若干ワンパターンになってきてる気がします。
勿論その回によってテーマは全く違うし、完成度も波がある。けど、何か最終的に見てるこっち側には同じ印象しか来ないわけで。
「あとは視聴者の考えに委ねる!」って感じが続いてる気が。
ウルトラQは「わざと消化不良感を残す」番組なのであの悪意に満ちて終わり!っていうエンドは良いんですが、流石に今回のコーヒーカップオチは解決すべきだったろうと。
消化不良を残して面白いと思えるのはそれが怪獣やら怪物の未知の生命だから。
けど、絵美子が仕掛けたコーヒーカップの中身についても、それも視聴者に委ねる形になってしまって、流石にそれはねぇな~と。
まぁ、私的にはあの中身は正平にとってショッキングな物が入っていたんでしょうね。
それで「いざ好奇心という蓋を開けてしまうと取り返しのつかない事になってしまうよ」と。
開けたら分かるよう細工してあるってのはあれでしょう、監視カメラも一緒に入ってると。
一応予想は出来たけど、これは本編で明示させた方が面白くなった気がします。
それを心得てからの、黒木の最期を視聴者に魅せる事で深みが増したと思うし。
とにかく、「人間の心理を怪物というSFチックな物を使って描く」という、私的にツボな回でした。
あとは脚本家を交互に回してマンネリ化を防いでもらえれば完璧ですかね。
次回は、住民が全く言葉を発さない不思議な街が舞台。
ここにメインキャスト達がまよいこんでしまうようです。
予告見る限り彼等はロボットのようですし、ウルトラセブンの「第三番惑星の悪夢」のオマージュか?
とりあえず、どんな感じになるのか、今から楽しみです。
それでは!
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